EP『ブラックアウト・ロマンス』オフィシャルインタビュー
葛藤と内省の日々の中で深まった揺るぎない確信を胸に、「LANDMARK」を掴み取りにゆく──。最新EP「ブラックアウト・ロマンス」オフィシャルインタビュー。
2025年9月に1stフルアルバム「FANDOM」をもってメジャーデビューを果たしてから、約1年が経った。今回のインタビューでは、まずは4人に、メジャー移籍以降の日々において変わったこと、または、変わらなかったことについて振り返ってもらった。続けて、2026年9月リリースの最新EP「ブラックアウト・ロマンス」の制作プロセスについて語り合ってもらった。今回彼らが赤裸々に語ってくれた言葉に触れてもらえれば分かるように、この約1年間は、4人にとって、決して順風満帆な日々ではなかったと言えるし、もしかしたら彼らは今も、とどまることのない変化と挑戦の荒波の中でもがき続けているのかもしれない。それでも、この約1年間を通して、「トンボコープが歌い鳴らし続けるべきものは何か?」「トンボコープが目指すべき場所は何か?」という問いに対する自分たちなりの答えを再確認した彼らは、かつてよりもずっと強くなったし、そして、そうした確信は、今回のEPに収録されている5曲にも揺るぎなく貫かれている。今回のインタビューを通して、4人の最新のモードを感じとってもらえたら嬉しい。

──本題のEPのお話に入る前に、まずは、2025年9月の1stフルアルバム「FANDOM」をリリースして以降の約1年の軌跡について振り返って頂きたいと思います。まずは、林さん、いかがですか?
林龍之介(Dr):「FANDOM」を出して、「FANDOM」ツアーを周って、そっから次は初のFCツアーをやって、で、今回の「LANDMARK」ツアーに繋がってるんですけど、「FANDOM」ツアーの後、キャパをどんどん増やし続けていったものをいったん下げたんですね。それはもちろん、集客がライブハウスのキャパに対して追いつかなかったというか、埋めれなかったっていうのもあったりしたんですけど、その一方で、今いるお客さんをもうほんとに大事にして、そっから増やしていきたい、もう1回地盤固めようみたいな方針があって。で、FCツアーは、すごい成功に終えられた実感があって。僕たち、「FANDOM」ツアーから、さらに言うとその前から、どういう方向性でやっていこうか、かなりギザギザに迷いながらここまで来たんですけど、でも、そんな中で、今回の「ブラックアウト・ロマンス」に向けて見えてきたものがけっこうあって。ライブでの実感、かませた感というか、そういったものもけっこう強くなっていって。それまでは、楽曲制作とライブはけっこう切り離されたものっていうイメージがあったんですけど、最近はそこの繋がりがより見えるようになったなっていうのは感じます。
──りんさんは、この1年間を振り返ってみて、いかがですか?
雪村りん(Vo・G):アルバム出して、「FANDOM」ツアーをやって、すごい自分の中で、これから頑張っていくぞっていう気持ちだったんですけど、思ったよりも、心の中に溜めてたものを解き放ち切ってしまった感覚に陥る時期があって。枯れちゃった、というか。
──燃え尽き症候群みたいなことですかね。
雪村:そうですね。やる気ばっかりあって、燃料がない、みたいな。そこで、自分と向き合う時間が、すごい、この1年で増えました。改めて、自分の人格だったり、トンボコープの進む道だったり、音楽だったり、そういうものを見つめ直して、今までにない視点で、そういう大事な、自分たちにまつわる物事を見るようになって、そこから、作るものとか発信することとか、ちょっとずつ変わったなっていう気がします。
──ご自身の中では、そうした内省の期間をどう位置付けていますか?
雪村:もう本当に必要な時間だったと思うし、より大きなバンドになるためには絶対に欠かせないことだったと思います。
──りんさんがそういうモードに入っていた時期、一番近くにいるお三方の目には、りんさんはどのように映っていましたか?
でかそ(B):まぁ、キツそうではあった。やっぱ、新曲が送られてくるスパンが、アルバム制作期間に比べたらぜんぜん落ち着いてて。でも、曲をリリースする予定は決まっていて。
そらサンダー(G):僕もちょうど最近それをXにポストしたんですよ。りんが本当に1人でしんどそうだった、みたいな話を。だから、すごい感じていました。
──りんさんの中で、そういうモードを突破するきっかけが何かあったのか、または、時間が経ち内省が深まっていくにつれて、自然と突破できたのかでいうと、どちらに近いでしょうか?
雪村:完全に突破したっていう感覚はなくて。ずっと、その中で変わり続けてるって感じですね。突破したっていう感覚は、一生来ないと思います。
──そのことに気付けたことは、今後の活動にとってとても大きなことかもしれないですよね。
雪村:そうですね。その中でもがき続けることが、アーティストとして在るべき姿なのかなと思ってます。
──改めて、りんさんの一番近くにいるお三方に聞きたいのですが、りんさんの変化したところ、進化したところ、または、変わらないところってあったりしますか?
そら:柔軟になったなって思います。前まで、悪い意味ってわけでもないんですけど、けっこう頑固だったんですよ。
全員:(笑)
そら:自分がこうと決めたものは絶対最後まで突き通したい、みたいな感じだったんですけど、最近は、わりとメンバーの意見を聞き入れるようになりましたね。
──今のそらさんのお話を、りんさんはどう受け止めていますか?
雪村:自覚はない…。
全員:(笑)
でかそ:でも、それは俺も思うかも。なんて言うんだろう。柔軟になったというのは、逆に言えば、もう余裕がなくなってきたというか、それはたぶん全員そうなんですけど、もうなんとしてでも、みたいな領域には来てるかなっていう。それによって頑固じゃなくなったってわけじゃないんですけど、まぁそっちのほうがいいかって考えられるようになった、その選択肢を取れるようになった、というのはあるのかなと思います。
──余裕がなくなってきた、というのは、焦燥感というか、まだまだもっと先へ進まなければいけないといった焦りのようなものなのでしょうか。
でかそ:個人的には、なので、みんながそうかは分かんないんですけど、焦りは、むしろ、もうちょっと前、1年前に感じてたというか。今は、焦ってるというよりかは、ちょっと難しいんですけど、どういう方法をとってでも、今より先に行きたいなと思っていて。それは、焦りっていうよりかは、何だろうな、前までは、こうやってうまくいったら一番いいって思っていたんですけど、今は、そうじゃなくてでも、目標を達成するために選ぶべき道、少しでも前に行ける方法を選びたい、みたいな感じではあります。
──これまでの一連のお話を踏まえた上でお聞きしたいのですが、ライブへの向き合い方について、皆さんの中で何か変化はありましたか?
雪村:お客さんとの関係性の見え方がより鮮明になったなって、僕は思ってて。今は、お客さんと、より鮮明に、一体感を持って楽しめてる感覚があります。
林:もちろん、楽曲のヒットも狙いたいですけど、最近はほんとに、ライブがもう、とにかく一体感を感じられると言いますか。そういう方向で、地道に積み上げることが大事というか、やっぱり、それって、たとえバンドが終わっても、確かな宝物じゃないですか。そういう、意味あるものを積み重ねるような選択肢を取れてるなっていう感覚があります。
──ここから、9月にリリースされた最新EP「ブラックアウト・ロマンス」のお話を聞いていきたいと思います。このタイトル、または、コンセプトは、いつ頃に浮かび上がってきたものなのでしょうか?
でかそ:収録する5曲が決まった時に、コンセプトの話をしたよね。都会の夜のイメージ、みたいな。
林:今回、「ブラックアウト・ロマンス」というタイトルを付けたのは僕なんですけど、ブラックアウト、つまり、停電っていうワードは、1曲目の「アポロ」(作詞・作曲:雪村りん)のほうに出てくるんです。で、その後ろに付いているロマンスは、リード曲の「ロンリープラネット」(作詞・作曲:林龍之介)のほうに寄ってるもの。このタイトルの意味で言うと、7月に「LANDMARK」(作詞・作曲:林龍之介)という曲を出したんですけど、ランドマークって、東京ドームとか、東京タワーとか、そういうイメージがあるじゃないですか。そういう、みんながパッと見て分かるようなものだけじゃなくて、今回は、停電の中にある灯し火みたいな、そういうものにフィーチャーした作品になればいいなと思って、それで、こういうタイトルになりました。
──停電とは、何を表象しているのでしょうか?
林:基本的に、人は、名無しじゃないですか。有名人に対しての、そうではない人々は。
──市井の人々というか。
林:生きている中で、基本的には知らない人がほとんど、というか。そういう人々に対して、光を当てたい。ブラッククアウトの中の灯火、体温のようなイメージがあって。
──今のお話を聞くと、暗いということ自体は、必ずしもネガティブなことではない、と。
林:そうですね、ネガティブではないです。
──「ブラックアウト・ロマンス」というタイトルが決まった時のことを振り返ってみて、いかがですか?
雪村:今までもそうだったんですけど、2人作曲者がいて、2人が書いた曲が入ってるアルバムに名前を付けるっていうのはかなり難易度が高いことだとずっと思ってて。その中でいろんなものを出してきたんですけど、今回の「ブラックアウト・ロマンス」の、停電という言葉は、僕の曲から出た言葉で、リード曲は龍之介の曲で、他に入ってる3曲も、このタイトルとちゃんと繋がりのあるものかなって思ったんで、今まで付けてきたタイトルの中で、一番この2人の中間地点に、いい意味でど真ん中にあるタイトルと思ってます。
──今回のEPには、バラエティに富んだ五者五様の5曲が収録されていますが、不思議と統一感があるような印象を受けます。
林:もともとは「スターゲイザー」(作詞・作曲:雪村りん)が入る予定じゃなかったけど入れることになったり、とか、そういう紆余曲折はあったんですけど、たしかに、いざこの5曲が揃った時、すごい調和が取れてる感じがするというか。リード曲が、いちおう「ロンリープラネット」っていうことになってるんですけど、EPのタイトルを決める会議が、会議全体の4時間の内の1時間ぐらいだったんですよ、で、残り3時間何をしてたかっていうと、リード曲を「アポロ」か「ロンリープラネット」のどっちにするかをみんなで話し合っていたんですよね。なんでそんなに迷ったかっていうと、いい意味でどっちでもよかったんですよ。で、もちろん、自分の曲をリード曲にしたいっていう、お互いのコンポーザー的思惑もあるんですけど、でも、この5曲でEPという感じが強くて、だから、リード曲が前に出すぎてないというか、それが調和の理由なのかなと思います。
──3時間、決して短くはない時間ですよね。
雪村:お互い、プレゼンしたんですよ。どう話し合っても、話し合いじゃ決まんないんで、もう戦うしかない、戦ってはないですけど、多数決で決めるしかないってなって。メンバーも、チームも、ほんといろんな面で信頼してるみんなだったんで、その人たちの多数決になら委ねられるなと思って。別に悔しさみたいなものはなくて、本当、いいEPになってよかったっていう1点に尽きますね。
──先ほど少しお話が出ましたが、結果的に「スターゲイザー」が入るに至った経緯などはあるのでしょうか?
林:今回のEPは、けっこう宇宙的なワードが多かったので、歌詞の統一感という意味ではまりがよかったのと、あと、この曲は、この前のFCツアーにおけるキーだったと思っていて。
──今回のEPに「スターゲイザー」が入った意義について、りんさんはどう捉えていますか?
雪村:今までは、抽象的なメッセージを歌ったりすることが多くて、それもそれでいい面はあったなって僕は思ってるんですけど、ただ今回は、もっとエゴを出して作ろうっていう話をして制作に臨んで。リード曲の「ロンリープラネット」も龍之助の実体験の出来事が元になっていたりとかしてて、そんな中で僕の「スターゲイザー」って曲は、僕の失恋、僕にとっての大停電の夜を書いた曲だったんで、さっきお話しした現実的に空いてしまった穴みたいなものにも本当ぴったりはまるものだなって思っていて。
──いろいろな巡り合わせの中でこの5曲が紡がれて、1つの作品になっていったのですね。
でかそ:「FANDOM」同様、曲調だけ見ると、結局このEPもバラエティに富んでるなとは思っていて。でも、「FANDOM」と明確に違うのは、親は一緒な感じがするというか。兄弟だけど、個性が違う感じがすごいするなって。「FANDOM」は、意図的に実験してバラエティ豊かな曲を作っていたから、あと、それぞれの曲を作った時期もすごいバラバラだったのもあって、違う家族という感じがある、いや、別に親で言ったら、2人が作ってるんで一緒なんですけど、今回は、1本、共通した太いものが通ってる感じがすごいあるなと思ってて。今までのバラエティに富んでるみたいなのとはまた違った富み方をしてるなと思いますね。
──この5曲を貫く何か、一貫した何かが、今のトンボコープにとって非常に重要なものなのだと思います。野暮な質問ではありますが、それは何だと思いますか?
林:愛、すかね。結局そうかなっていう。それは、ラブだけじゃないというか、隣人愛的なものも含むというか。
──もう少し大きな、博愛や友愛なども含めた、より広義な愛というか。
林:そうですね。人助けも愛かなっていうことだったりとか。あとはもう、純粋な愛もそうですし、それは全体的にあるのかなと思いました。
──この作品を完成させた手応えを踏まえ、今の率直な気持ちを聞かせてください。
林:1つは、ツアーが楽しみです。まだライブで披露したことのない曲があるんで、これがお客さんに届いた時、どういう感じになるんだろうっていう気持ちがあるのと、あと、それはさておき、やっぱ新しい曲をもっと出したいなって気持ちが今はけっこうあります。
──このEPを作ったことによって創作意欲がさらに刺激された、ということでしょうか。
林:そうですね、なんでなんですかね。「ロンリープラネット」に関して言うと、「LANDMARK」と同じ日にグループに送ったんですよ。で、僕のイチオシは「LANDMARK」として送って、その結果、シングルで先にリリースするっていう形になったんでけど、その意味で言うと、「ロンリープラネット」は、いい意味で力を抜いて作れたというか。そういう内容だし、曲調的にもリラックスして聴いてほしい曲だなと思ったんですけど、逆に、最近は、やっぱり大ヒットが欲しいなっていう気持ちが湧いてて、だから、新しいもの作りたいなっていう気持ちです。
──りんさんは、いかがですか?
雪村:いちトンボコープリスナーとして、この作品の先にあるものを見たいなと思いますね。この「LANDMARK」っていう目印を今回のツアーで掴みに行くわけですけど、それを掴んだ先に何があるのかっていうのがすごい気になる一作だなって思ってて。で、僕が今回の一番の目玉として出した「アポロ」っていう曲も、〈この背中を追いかけてくれ〉っていう歌詞で終わってるんで、いちリスナーとしてもその背中を追いかけたい。
──今のお話を聞いて、1年前に「FANDOM」についてインタビューをさせて頂いた時に、アルバムタイトルの候補として「LANDMARK」という言葉が最後まで残っていた、というお話があったことを思い出しました。皆さんにとって、ランドマークとはどのような概念なのでしょうか?
でかそ:俺は、全部のこういう系の質問に同じ答え方をしてるんですけど、今の俺が何かのランドマークになるとしたら、基準は、全部、18歳ぐらいの当時の自分がかっこいいと思うかどうかで。やっぱ、18歳の時の自分にダサいって思われたくないっす。
──常に過去の自分に見られている、当時の自分が憧れるような自分でいたい、というか。
でかそ:そうですね。自慢の未来の俺でありたいです。
──お三方は、いかがですか? ランドマークという概念について、または、「LANDMARK」という楽曲について。
雪村:トンボコープにとっても、自分にとっても、“終わり”だな、と思います。このバンドが終わる時、自分が死ぬ時が、1個自分にとってのゴール、ランドマークなんですけど、その時、ちゃんと笑えてるか、泣けてるか、どんな顔してるか、どんな顔してたいか、について考える、というか。やっぱり、音楽って、人に喜怒哀楽を与えるものだと思うので、いち作家として自分の音楽で何を人に与えたいか、その真ん中の太い芯は変わらないにしても、その時々で多少なりとも変わっていくものではあると思うんで、そういうものを、なんだろう…、終わりがあるんだよっていうふうに思い出させてくれる、これから先も常に思い出させてくれるのが、この「LANDMARK」って曲なんじゃないかなと思います。
林:僕の中で、「LANDMARK」を作った時に一つ込めた想いは、いわゆるランドマークって、目指す場所と捉えることが多いと思うんですけど、僕としては、帰る場所というか、目的地ではない場合でも使いたいと思っていて。聴いてくれる人が路頭に迷った時の目印というか、帰る場所というか、逃げる場所というか、そういうイメージが強いです。
そら:僕は、実家って言おうとしてたんで、一緒だなと思って。僕は、実家みたいなバンドになりたいなって、ずっと思ってて。僕が一番最初に音楽やりたいかもって思ったバンドは全然今でも聞いたりするし、絶対に忘れないんですよ。他3人も絶対そうだと思うし、音楽好きな人はそういうバンドが絶対にいると思うんで。人間が形成される場所って、絶対最初はお家じゃないですか。だから、そういうバンドになりたいです。お家があるって幸せなことなんだなって。この年になって親のありがたさが前よりすごい伝わるようになったというか、実感するようになってきたんで。どんなに親が嫌いな人でも、感謝をしてほしい。
全員:(笑)
でかそ:なんかあった?
そら:ないですけど、でも、実家みたいな、安心できるバンドでありたいですね。